静岡県介護支援専門員協会災害対策委員長&静岡市ケアマネット協会災害対策委員長 林 隆夫
東日本大震災から10年が経過しました。10年という節目で、テレビや新聞には関連の番組や記事を毎日目にします。それらを見ると、被災された方々の生活は大きく変わってしまい元には戻っていないこと、そして特に、大事な方をなくされた方にとって災害時の記憶は鮮明で、時間が止まってしまったような感覚で、切なく悔しい思いを抱き続けている方が大勢いらっしゃることを知ることができます。しかし同時に、被災地においても震災の風化が始まり、語り継いでいく活動が大事になっていくこともわかりました。
私は東日本大震災のボランティア活動に参加し、その後の生き方や考え方が大きく変わったと感じています。被災地を体験した者として、自然災害の怖さや平常時の対策の必要性を伝えていく役割があると感じ、災害対策に関わっています。
私たちは過去の教訓から、被害を最小限に抑えるための方法を学ぶことができます。日本介護支援専門員協会や県協会では、過去の災害支援活動等から得た様々な経験をもとに災害対策マニュアルやBCP(事業継続計画)を作成し普及を促進しています。新型コロナウイルス感染により日常生活も変わりましたが、感染症も自然災害の一つに位置付けられています。感染症対策を含めて災害対策を進めていくことは、日ごろのケアマネジメントのリスク管理にも役立ちます。また地域で災害対策を考えることは、地域包括ケアシステムの構築に繋がります。
おりしも、今回の介護保険制度改定において、感染症や災害が発生した場合でも、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制の構築が求められています。皆様の事業所においてもこの機会に今一度、災害対応の充実を図っていただくようお願い致します。と言ってもいきなりBCP作成は敷居が高いと言われるかもしれません。まずは身近にできることから取り組みましょう。例えば事業所の備蓄をチェックする(感染症予防も含めて)、安否確認の優先順位について事業所内で話し合う、またモニタリング時に利用者さんに指定避難所を確認する、など比較的簡単にできることから始めてみてはいかがでしょう。
震災から10年ですが、この間にも日本列島は地震や風水害などの自然災害に毎年のように見舞われています。そして、死傷者の中で高齢者等の災害弱者の割合が高いという報道を聞く度に、やりきれない気持ちを感じ続けています。一つ一つの小さな積み重ねが、実際に災害が発生した時に利用者・家族だけでなく、私たち自身の命や生活を守ることになることを信じています。